花や樹木のモチーフをおおらかに縫い上げていくハワイアンキルト。
眺めているだけでも癒されます。
いつどのようにしてハワイに伝わったのでしょうか。その歴史を紐解いていきましょう。
始まりは宣教師の妻たちから
19世紀初頭(1820年の説もあり)にイギリスから宣教師が派遣されました。
彼らの妻たちがハワイの女性たちに裁縫を教えたのです。
これが、ハワイにおける布地とキルト技術の始まりとなります。
それまでハワイには布地はなく、木の皮をたたいて作った「カパ」を使用していました。
なぜパッチワークは広まらなかったのか
宣教師の妻たちは洋裁技術とともにパッチワークキルト(小さな布を縫い合わせて大きな布にし綿をはさんでキルティングする手法)も教えましたが、あまり普及しませんでした。
なぜかというと、ハワイにはもともと布がなかったため、余り生地を使う文化がなかったからです。
小さい布をちまちまと縫い繋いでいくパッチワークは、おおらかなハワイの人たちには受け入れられなかったのではないかと私は想像しています。
ハワイアンキルトの誕生
宣教師の妻たちから洋裁の技術を学んだハワイの人々は、大きな布地を使い、その上に花や樹木を模したモチーフをアップリケする独自の手法を編み出しました。
具体的には、一枚の大きな布を8分の1に折りたたみ、カットしてアップリケしていく独特のスタイルです。
木陰に干してあった白いシーツに映ったレフアの木の影がハワイアンキルトのヒントになったという言い伝えもあります。
もともとパッチワークは教会の寄付を募ったり、寒さをしのぐために余り布をつないで大きな布にして、間に綿を挟んでキルティングしたりしたものです。
ハワイは暖かいですし、細かいことは気にしないハワイの人たちにパッチワークが広まらなかったのもうなずけますね。
古いハワイアンキルトには、白地に赤のモチーフが多いのですが、真っ白なシーツにレフアの影が映った時のイメージなのかもしれません。
デザインと技法
ハワイアンキルトのデザインは、ハワイやポリネシアの花や樹木が多く使われています。
有名どころだと、ハイビスカス、プルメリア、モンステラ、パンノキなどです。
布を8/1に折りたたんでカットするため、対称的であり、中央から放射線状に広がります。
また、キルティングには、モチーフの周囲にする落としキルトやモチーフにするステッチの他に、土台布に『エコーイング』という波紋のようなステッチが施されるのも特徴的です。
牛や馬や犬などの動物はハワイアンキルトのモチーフでは使いません。
4つ足の動物の魂を閉じ込めてしまうと考えられていたようです。
ただ、近代ではイルカ、海ガメ、クジラなど海の動物のモチーフは好まれてよく作られています。ウクレレやフラに使う道具のハワイアンキルトもあります。
ハワイ王朝にゆかりのある王冠や旗、紋章をデザインしたものは、「フラッグキルト」と呼ばれています。
王侯貴族の装飾品がモチーフのハワイアンキルトもあります。
王族の髪飾りや「カヒリ」と呼ばれる鳥の羽で作った王族用の飾りものをデザインしたハワイアンキルトも豪華で素敵です。
余談ですが、真っ黒な布は喪をイメージするため使いません。
ハワイアンキルトの魅力
ハワイアンキルトの魅力はなんといっても出来上がりの達成感と美しさです。
2色のシンプルな配色は、組み合わせる色によってイメージが異なります。
そこにモチーフの意味や伝説が合わさって、さらに特別なものになっていきます。
縫っているあいだは、『無』になり、集中できます。
あまり細かいことは気にせずに、どんどん縫い進めていけるおおらかさも魅力の一つでしょう。ピースワークと呼ばれる小さい布をつないでいくパッチワークは、数ミリづつの狂いが後々大きく影響していきますよね。
残念ながら私には向いていませんでした。。。
一人でコツコツと縫うのも良いし、仲間とおしゃべりしながら作品を見せ合いながらワイワイ集うのも楽しい時間です。
まとめ
ハワイアンキルトを通じて、自然と深く関わりながら暮らしてきたハワイの人たちの心に触れ、青い海と爽やかな風、色とりどりの花やしたたる緑が感じられます。
フラやハワイの伝説とも関わりが深いハワイアンキルト。
実際に見る機会があればぜひご覧になって、その魅力を肌で感じてくださいね。